薩摩いろは歌(島津日新公いろは歌)のさ
酒も水流れも酒となるぞかしただ情あれ君がことの葉
「場合によっては、酒も水のように感じるし、川の流れが酒と感じる場合もある。君主たる者、部下にかける言葉には常に情けをかけよ」
普通は、酒を振る舞えば、気持ちも高ぶり、士気が上がるものでありますが、酒を与えても水を飲むがごとく、しらける場合があります。
逆に、酒の代わりに水を与えても、気持ちが高揚し、士気が上がる場合があります。
この差は、与えるものの与え方の差によるものであります。
君主が士気を上げるために、酒を振る舞った場合、部下のこと、国のことを思い、情け深き心で振る舞えば、部下たちの士気は上がり、気持ちも高ぶってくるでしょう。
しかし、わが身のことのみを思い、部下や国のことを顧みず、ただ士気を上げるために酒を振る舞っても、部下たちの士気は上がらず、ただ水を飲んでいるがごとく冷静でしょう。
逆に、君主が部下のこと国のことを思い、情け深く接すれば、単なる水を与えても、一流のお酒のように感じ、士気も上がります。
つまり、上司の日頃の振る舞いによって、同じ行為を行っても、部下の感じ方は異なるということになります。
リーダーたる者、自分の保身を思うのではなく、部下や会社、社会のことを思い、大局をみて考えなければ、人はついてこないということだと思います。
世の中には失敗すれば部下のせい、成果が出たら自分の手柄というような上司もいると思います。
しかし、上司は責任を取るのが仕事で、成果が出たら部下のおかげという気持ちで仕事をしなければ、部下はついてこないと思います。
一人でも二人でも部下のいる上司は、常にこのことを頭の片隅に入れておく必要があると思います。